![]() | 楊家将〈上〉 北方 謙三 (2003/12) PHP研究所 この商品の詳細を見る |
ネタバレ警報です。未読の方はご用心。
今までのレビューは、なるべくネタバレのないように気をつけてたんだけど、今回は例外。じゃないと、書けないから。
しかも、昨日読み終えたばかりの本のレビューを今日書いちゃうという例外っぷり。
寝かせられない。
舞台は、宋が建国された頃の大陸。
現在の中国は、北から遼・北漢・宋と3つに分割されていた。
北漢の将軍・楊業は、帝に冷遇され、ついには宋に帰順することを決断する。
それをきっかけに、北漢は滅び、遼と宋が国境を接し、激しい争いを繰り広げる。
ってとこから、物語は始まります。
楊業には7人の息子がいて、上から延平・二郎・三郎・・・と七郎までいるわけですが、どれも「楊家軍」としての誇りを持っているアッパレな男子たち。中でも、エノモトのお気に入りは四郎。
楊家将後伝・血涙で四郎が主人公の一人になってくるってのはまた別のお話。
宋の楊業に対するに、遼には「白き狼」耶律休哥。
で、この耶律休哥、物語の最初では、遼の国母である蕭太后に対し、あまりにも不遜な物言いが多かったため、完全に干されてる状態。
だが、宋・遼二国時代に入り、楊家軍が宋国内で台頭するにつれ、「対楊家軍」として、脚光を浴びるようになる。
ここでようやく舞台は整い、楊家軍vs耶律休哥、という構造になるわけで。
で、この耶律休哥。彼は、あまりにも天才的な用兵をするため、蕭太后から「独立行動権」を与えられている。軍律もなにもあったもんじゃない。遼の総司令官でさえ、耶律休哥が今どこで何をしてるのかを知らない状態。
周りの軍人たちも、耶律休哥の行動は目に余るというより、はっきり言って気に入らない。が、ここぞというときに現れては、敵に痛撃を与える耶律休哥を蕭太后が買っているため、文句が言えない、という状態。
対する楊家軍。
遼は、基本的に軍事国家。でも宋は文治国家なのです。どっちが良いとか悪いとかじゃなくて、そういうもの。楊家軍は、ある程度の独立性を保っているものの、独立行動圏なんてとんでもない。でも、精強であることは誰もがわかっている。
かくして、楊家軍は常に宋軍の「先鋒」かつ「殿軍」という厳しい配置に置かれ続けることになる。
あ、熱くなりすぎ。
書きたかったのは。
耶律休哥の「独立行動権」。
彼には、しがらみもなければ、そもそも「遼のために戦う」という気持ちを持っているのかどうかも疑問。楊業が宋の帝のために、という熱い気持を持ち続けるのと対照的に。
ただ、気持ちの良い戦をしたいだけ。耶律休哥自身、枷がなくなったようで、羽が生えたようと思っている。
でも、耶律休哥は本当に自由なのか。本当に、思ったとおり行動できるのか。
ってのが現れてくるのが、『楊家将』の一番最後のシーン。
耶律休哥軍は、楊業を討った。
でも、それは宋軍の裏切りのせい。
これで、耶律休哥が満足とは思えない。そして、そして、ここからは本当に妄想の世界に入るけれども、耶律休哥が本当に自由だったら、楊業はああいう死に方はしていない。
楊家軍が宋に帰順するとき、唯一異論を唱えたのが、例の四郎。
四郎は、北漢を見捨て、宋にも帰順せず、楊業が独立し、新たな国を作る構想を持っていた。
でも、もし仮に楊業が独立していたとして、それで楊家軍は自由を得られたか。
それもない。
楊業も耶律休哥も枷をはめられて、自由を求めて。
でも、枷をはめられる道を選んで死んだ楊業に一票。
楊家将
本の続きを待っている間に暇潰しのつもりで読み始めたのがきっかけでした。元々、歴史小説の類は大好きだったので(しかも戦国時代物)一気に読みました。文治と武門の軋轢は避けられないものだったとして尚且つ宋の武人として理不尽な戦いに挑み続けた楊業と息子達の生き様が悲しくもあり、武人としての信念を貫きとした生き方が天晴れとも思えました。 続編『血涙』では六郎延招が兄弟でただ一人生き残り、楊家軍を解体して開墾農夫として余生を送るところが、乱世の終結と以後、元王朝に滅ぼされるまでの文治中心の長命王朝の始まりを顕わしていたのだと思えます。 平和とは犠牲なくして得られないものだと改めて考えさせられた傑作でした。
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